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INTERVIEW

第67回学展大賞インタビュー

感謝の気持ちを
絵の具に乗せて

第67回学展大賞インタビュー

感謝の気持ちを
絵の具に乗せて

第67 回学展大賞受賞 宍戸琴美さん

今年67回を迎えた学展。今回の学展大賞は、お父さんを力強いタッチで描いた横浜市立神奈川中学校3年生の宍戸琴美さんが受賞した。小学校1年生の時から学展に応募し、1度も入選したことがなかったという宍戸さん。今回初めて人物画に挑戦し、見事大賞に輝いた。「全体からディテールに至るまで緻密に描かれていて、鑑賞する距離間によっていろいろな表情が浮かび上がる絵」と選考委員の美術手帖編集長 岩淵貞哉さんがコメントされる等、他の選考委員の方からも高い評価を得た。大賞を受賞した琴美さんと、娘の晴れ舞台を見に来ていたお父さんの眞琴さんに話をおうかがいした。

初めての人物画~一番近くの対象

─ 学展大賞の受賞おめでとうございます。高校生の応募も数多くある中から中学3年生の宍戸琴美さんが大賞受賞となりました。今どんなお気持ちですか?
ありがとうございます。以前から賞は取りたいと思ってたので、すごくうれしいです。
─ 学展にはこれまで応募したことがあったのですか?
小学1年生の時から『あす加アカデミー』という絵画教室に通っていて、応募していました。これまで自分の好きな絵を書いて出品していましたが全然でした。今回初めて人物画に挑戦して賞をとったのでびっくりしています。
─ 作品はどこか旅行に行かれたときを描かれたのでしょうか?
絵画教室のみんなで山登りに行ったときの写真を見て描きました。その時、付き添いでお父さんもきてくれて。一番笑っているお父さんの写真を探して描いたんです。
─ 絵が完成した時は、どういうお気持ちだったか教えてください。
下書きは1日で描きましたが、春ぐらいからずっと締め切り近くまでかかって描いたんです。だからやっと完成したという気持ちでした。
─ 受賞した作品『お父さん・58歳』はタイトルにもお父さんが入っていますよね。画題にお父さんを選んだ理由は何でしょうか?
私の家はお父さんと私しか家族がいません。いつも家事や身の回りのことをしてくれるお父さんに感謝の思いを伝えたかったんですが、なかなか「ありがとう」と言うのは恥ずかしくて(笑)。普段あまり会話しない分、絵を通して気持ちを表したかったんです。
─ 描く上でこだわった点などがあれば教えてください。
周りの葉っぱのところが描くのに苦労しました。最初どうやって描けばいいかなと悩んだんですけど、公園の葉っぱを拾ってきて、写真に撮ったりして絵にしていきました。あとはお父さんの洋服のシワですね。写真だとシワの細かい部分がわからなかったので、自分の洋服でシワを再現して描いていきました。

受験勉強の合間で

─ 小学生の時から通っているあす加アカデミーは今年、吉川和希先生も最優秀指導者賞を受賞されていましたね。あす加アカデミーには週にどのぐらい通っているのですか?
毎日通っていますが、絵を描くのは土曜日だけなんです。それ以外は勉強を見てもらっています。塾と絵画教室が一緒になっているんです。今は中三で受験が控えているので、勉強ばっかりですね。今回の受賞は吉川先生も教室のみんなも「おお、すごい」と言って喜んでくれました。
─ 小さい頃はどのような絵を描いていたか教えてください。
保育園の年長ぐらいからあす加アカデミーに通っていて、その時は動物が好きだったので、動物や魚の絵ばかり描いていました。
─ 絵を描くことは自分にとって気晴らしですか、それとも自己表現でしょうか?
勉強しているときは絵が気晴らしになりますが、なかなか思い通りに描けないと、描くのが辛かったりします。今回の絵は気晴らしというよりは、「お父さん、いつもありがとう」という気持ちを絵の具と一緒に乗せて描きました。
─ 自分が対象となったお父さんは喜んでましたか?
あんまりでした。心の中では喜んでいると思うんですけど、私が割と反抗的なので、多分伝えるのが怖いんだと思います(笑)。
─ 将来は絵を描く道に進みたいですか?
特に絵の道は考えたことないです。高校も美術系ではなく、普通高校志望です。まだどうなるか全然自分ではわからないですが、でも友だちにお土産で美術家の草間彌生さんのグッズをもらって、美術に少し興味を持ったり、将来的にはデザイン関係の仕事は面白そうだなと思っています。

娘の成長を感じて

─ 受賞おめでとうございます。お父さんにお伺いしたいのですが、あす加アカデミーには琴美さんご自身で通いたいとおっしゃったのですか?
もともとは家の事情で入会しました。学童保育じゃないですけど、預かって面倒見てくれるんです。学校の勉強、宿題も見てもらえて、絵もその中のレッスンのひとつでした。私は娘を預けておけば安心して仕事ができますし。自分から行きたいというよりは、お願いする形で始まりました。
─ 大賞に選ばれた作品は、琴美さんが「お父さんへの感謝の気持ちを伝えたかった」と教えてくれました。
本人が言ったかもしれないですが、うちは片親なんです。娘も小学高学生から反抗期が始まって、今むずかしい年頃で、親父の背中なんて見ないよなと思っていました(笑)。でも今回受賞の機会をいただくことで、親父の苦労をちょっとは見てくれてたのかなとわかってうれしかったです。
─ ご自身がモチーフになって、お父さんとしてはどういう心境でしょうか?
絵を描くときに他の描く対象はないのかって思いましたね(笑)。でも照れ臭いですけど、やっぱりうれしかったです。
PROFILE

宍戸 琴美
SHISHIDO KOTOMI
横浜市立神奈川中学校3年生。
2017年度「第67回学展」グランプリ受賞。
同年8月 新宿クリエーターズ・フェスタ 学展巡回展にて展示(ヒルトン東京地下ギャラリー)
同年11月 渋谷芸術祭 学展巡回展にて展示(地下鉄渋谷駅/シブヤアワード会場)
同年12月 フランスSalon des Beaux Arts 学展巡回展にて展示(パリ・カルーゼル・デュ・ルーブル)
2018年3月 横浜市教育委員会 文化・芸術・科学・技能部門表彰に選ばれる