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INTERVIEW

第66回学展大賞インタビュー

キャンバスいっぱいに、
表現する喜びを

第68回学展大賞インタビュー

キャンバスいっぱいに、
表現する喜びを

第68回 学展大賞受賞 片山開陽

第68回の学展は、心機一転。江東区東雲にあるモダンな建築の『TOLOT / heuristic SHINONOME』を展示会場とし、表彰式はお台場にある『日本科学未来館』でおこなわれた。
そんな記念すべき2018年度の学展大賞は、二つ橋高等特別支援学校1年の片山開陽さんが受賞。作品のタイトルは『雪山に住む』。過酷な雪山で生きる白い雷鳥(らいちょう)が、人間の世界を静かに見渡している様子を描いた作品だ。

自然と鳥が大好きという開陽さん、障害を抱えながら絵に打ち込んできた彼を側で見守り続けたご両親、横浜で絵画教室を経営する鈴木雅弘先生(以下、鈴木先生)にお会いして、話をお伺いした。

雷鳥にもらった勇気

─ 大賞受賞、おめでとうございます。受賞報告を受けたときの、率直な気持ちを教えてください。
ありがとうございます。油絵を描き始めてまだ日が浅いので、賞をいただけるとは思っていませんでした。まさかの出来事に戸惑いましたが、感激するほどうれしかったです。
─ 『雪山に住む』は、キャンバスいっぱいに描かれた白い鳥が印象的な作品ですね。なぜ鳥を描いたのですか?
これは雷鳥といって、一年中寒い雪山で暮らす鳥なんです。図鑑でしか見たことがないのですが、可愛らしい見た目とは対照的に、厳しい環境に身を置くことを知って、そのたくましく生きる姿、勇気に惹かれて描き始めました。
─ 雷鳥を描いている時は、どんな気持ちでしたか?
ずっとこの雷鳥と対面していたので、こちら(人間)の世界を覗かれているような気持ちになりました。僕も「どうしてそんなところに住んでいるの?」と、雷鳥の世界のことを考えながら筆を進めていました。
TOO PAINTING SCHOOL
Located in Hoshikawa,
Yokohama City, Kanagawa Pref.

ワクワクして描くイメージ

─ 小さい頃から絵を描くのが好きだったのですか?
好きで絵を描くようになったのは、小学5年生からです。母の勧めで『TOO絵画教室』に通い始めたのがきっかけです。それまで、絵にはあまり興味がなかったのですが、教室で描くたびにどんどんハマって、今では大好きになりました。
─ 長く通っているんですね。元々興味がなかった絵を好きになったのはなぜでしょうか?
幼い頃は、落ち着いてなにかに取り組んだり、鉛筆で文字を書くといったことが苦手でした。でも、教室で絵を描き続けるうちに、筆もうまく使えるようになって、自分がイメージする世界を表現する楽しさを知りました。それからは、いつもワクワクした気持ちで描いています。
─ 教室にはたくさんの生徒さんがいらっしゃいますが、一緒に過ごす時間は楽しいですか?
はい。みんなと話すのはとても楽しいです。それに、他の人が描いている様子を見て、この描き方を真似してみたいなとか、この人はこういうものが好きなんだなとか、絵を通してたくさんの発見があるのも面白いです。鈴木先生も面白いです。
─ 鈴木先生はどんな方ですか?
よく冗談を言います(笑)。でも、絵のことになるととても真剣で、作品を粗末に扱ったり、道具を無駄遣いすると厳しく叱られることもあります。普段はとても優しくて好きな先生です。

先生も生徒も“自然体”な絵画教室

開陽さんが通う画塾は、神奈川県横浜市にあるTOO絵画教室だ。この教室を営む鈴木先生の指導スタイルは“自然体”。何かを押し付けるのではなく、生徒が自ら取り組むテーマや課題について質問があった時に教える、という方針をとっている。「生徒も“変な先生だなあ”と思ってると思います。でも、いざという時に質問してみると“意外とちゃんとしてるじゃん”みたいな(笑)」。そう笑いながら話す鈴木先生は、生徒の好みや癖まで、とても細かく把握している。
開陽くんの大賞受賞について聞くと、どこか感慨深そうに答えてくれた。「開陽くんが中学生になる頃、油絵をしてみないかと勧めたんです。お母さんは、心配していたんですが、大丈夫だからと説得して。開陽くんの穏やかな人柄も、実直に制作へ取り組む姿も見てきましたから、今回、大賞を受賞できたということは、私としても特別な喜びがありました」。

TOLOT /
heuristic SHINONOME
Located in Shinonome, Koto-ku, Tokyo

何度も積み重ねた下書き

─ 絵を描くときのこだわりはありますか?
下書きを何枚も描くことかなと思います。いつも、画用紙にたくさん下書きを練習して、構図が見えてからキャンバスに描くようにしています。たくさん描くので、先生には「教室の画用紙がすぐなくなる」と言われるくらいです(笑)。
─ 『雪山に住む』を描いたときも、下書きをたくさん描いたのですか?
はい。納得がいくまで、たくさん下書きを描いたので、成果を出せたのかなと思います。好きな雷鳥をいっぱい描けてうれしかったです。
Miraikan - The National Museum of Emerging Science and Innovation
Located in Aomi, Koto-ku, Tokyo

信じられなかった大賞受賞

開陽さんのご両親は大賞受賞の連絡を受けた時、本当の話だと信じられなかったという。「鈴木先生から電話をもらったんですけど、全然信じられなくて。“先生、冗談言ってやる気にさせるのがお上手ですね”なんて言ったくらいです(笑)」と話すのは開陽さんのお母さん。開陽くんに絵を勧めた理由を聞いてみた。「開陽は障害を持っていて、学校で他のお友達と同じことをやるのが大変そうでした。別の世界を持たせてあげた方が良いのかなと思ったんです。絵を描いて自分を表現するのもひとつの方法なのかなって」。
一方でお父さんは、「何を描きたいか、開陽の気持ちが現れた絵」だと『雪山に住む』を評価し、こんなエールで彼の背中を押した。「感情のはけ口としてではないですけど、“表現する者”としてこれからも絵を続けていってほしい。僕らも開陽のそんな姿を非常に楽しみにしています」。

自然と鳥を大切にしてほしい

─ 開陽さんの将来の夢はなんですか?
まだ具体的には決まっていないのですが、絵に関する仕事に就きたいと思ってます。それと、今回多くの人に作品を見てもらえたことがとてもうれしかったので、これからも絵をたくさん描いていきたいです。
─ 絵を通じて、どんなメッセージを伝えたいですか?
自然を大切にしてほしい、鳥も大切にしてほしいと思っています。鳥を描いていく中で、自然も鳥も本当に好きになりました。
─ 最後に、フランス展示への意気込みと、今後の目標を教えてください。
やっぱりルーヴル美術館は立派なところなので、自分の作品が飾られるのはとてもうれしいです。これからも良い作品を描けるよう、努力したいと思います。
PROFILE

片山 開陽
KATAYAMA KAIYO
二つ橋高等特別支援学校1年生。小学校5年生の時に絵を習い始める。自然と鳥、サッカーと絵が好きな15歳。