ENTRY募集締切 7/7(月)
_Chapter1 本編映像

Full Movie

「他者を想像する4日間」本編映像(約30分)

_Chapter2 イントロダクション

Full Movie

企画の目的と背景

本企画は、現代社会において薄れつつある「他者を想像する力」を、子どもたちの身体表現と芸術活動を通じて再び育むことを目的とした4日間の創作ワークショップです。根本的な目的は、他者を「わかる」ものとして取り込むのではなく、「わからない」ままに想像する力、すなわち「想像の倫理」を育てることにあります。

The Ethics of Imagination 想像の倫理を育む

実施の背景には、現代社会における効率と即応性の優先があります。子どもたちは「わかりやすい答え」を求められ、自ら問いを立てる機会が減少しています。デジタル環境の進化と共に、他者との身体的接触や「異質なもの」への出会いも減少しています。他者との間に「誤解」や「違和感」が生じた際、それを抱えたまま想像をめぐらせることよりも、即座に排除・断絶する方が容易であるという風潮がある中で、「異なる他者に対する想像力」を育む機会を設計することが、本企画の出発点となりました。

To Face the Unknown わからないけれど、向き合いたい
曖昧さを肯定する
ワークショップの特徴と実践内容 ワークショップの特徴と実践内容

このワークショップは、身体を用いた即興的な演劇ワークや非言語での対話を通して、「わからないけれど向き合いたい」という感覚を子どもたちの内側から引き出すことを目指しました。また、「表現すること」そのものに焦点を当て、評価や上手下手ではなく、「過程」「試行錯誤」「曖昧さの肯定」を価値としています。
本プロジェクトは学展初の試みとして実施され、学展出展者の小中学生7名が参加しました。俳優の髙橋一生氏は、子どもたちを指導するのではなく、創造のプロセスに寄り添い共に想像し続ける存在として「想像の伴走者」を務めました。
ワークショップでは、身体を用いた即興的な遊びや対話を通し、言葉にならない経験や他者の気配を「見えないもののかたち」として絵に昇華することに焦点を当てています。最終的に、全員で共同制作する「場のキャンバス」2枚を完成させました。その成果として、創作プロセスを記録したドキュメンタリー映像作品を国立新美術館講堂にて上映し、完成した「場のキャンバス」2枚は国立新美術館・学展展示室にて展示しました。

内面の風景を可視化
Paths Drawn by Imagination 想像の軌跡を辿る
企画の立場と記録

本企画は、完成された作品を目指すのではなく、日々の創作の過程そのものを大切にしています。誰かに評価されたり、商業的に消費されたりすることを目的とせず、参加者一人ひとりが自分の表現と向き合うための場をつくることを目指しています。この4日間の軌跡は、映画監督・二宮健氏によってドキュメンタリー映像として記録されました。

_Chapter3 _Chapter3 企画者・参加者コメント 企画者・参加者コメント

Comment Comment

想像力を未来へ繋ぐ

いまの世界では、他者を想像する力が少しずつ薄れつつあるように感じます。言動がすぐに評価や断定、そして時に断罪へと向かう時代の中で、見えない誰かや何かを想うこと――その小さな試みが、人と人をつなぎ直す最初の一歩になるのではないでしょうか。
子どもたちはワークショップの中で、他者になり、動物や風、紙や暗闇にまで、お芝居という手段を使って姿を変えます。その体験は、外界とつながることでしか得られない「内側の変化」を呼び起こすきっかけになるのではないかと思うのです。
見えないということは、不安を伴う瞬間もあります。ですが、その中で模索し、内側を頼りに手探りをしながら感覚を研ぎ澄ます。すると、再び“見える世界”に戻ったとき、普段の光がただの白で構成されていなかったことに気づきます。
白の中にも黒があり、その陰影こそが、白をいっそう鮮やかに際立たせます。
黒があるからこそ、白が白たらしめられていることに気づくのです。
想像するという行為は、他者を理解するためだけではなく、自分の内側を深く耕すための行為でもあります。外と内が呼応し合うとき、人は初めて“個”として目を覚ます。今回の学展の試みは、その往復の体験を通して、人間が本来もっている想像力をもう一度取り戻す営みだと感じています。
その力こそが、これからの世界をやさしく支える根になると信じています。

髙橋一生

[学展理事 / 俳優]

Issey Takahashi
プロセスを詩的に描く「想像の装置」

「見えないもののかたち」を他者と分かち合おうとするとき、その実感の基準をどこに置くべきかは容易でありません。
それでも、この曖昧さを引き受け、合理性に回収されない実践の場を立ち上げようとする一生さんの意志に共鳴し、その試みを映像作品として記録しました。
参加した子どもたちは、初めて出会う刺激や惑いに揺れながら、一枚の絵に筆を交えました。他者から逃れられないまま自分の痕跡を残す行為は、ときに戸惑いを生みかねません。それでも筆致が交わるたびに境界はほどけ、社会の只中で創作する身体として子どもたちの姿が立ち上がっていく——そこでは、創作の喜びをより深く、より大きく体得していく過程が一貫して観察されました。
この経験は、創作が他者と社会に開かれる条件を手探りで確かめる機会となりました。この活動を続けていくことが、いま私たちにできる実践のひとつだと考えています。

二宮健

[映画監督]

Ken Ninomiya
違う世界を共有する喜び「絵が繋ぐ未来」

ワークショップに来る前は、全く知らない人たちばかりだったので少し緊張していました。私たちは「子供」というまだ小さい年齢で、それぞれが「違う世界」を持っているからこそ、その世界を色んな人と共有し、新しいアイデアを出して他の人と繋がることが、これほど喜びになるのだと知りました。
これから先、色々なことと向き合っていく中で、絵を描くことがずっと好きでいられるかどうかは自分でもまだ分かりません。でも今は、「絵を描いていて楽しい」という気持ちを大切にしています。この楽しさを忘れずに絵を描き続けて、それが少しでも将来に繋がれば良いなと思っています。この経験を通して、人との繋がりや、周りの人と一緒に描く楽しさを強く感じました。

渡邉結月

[企画参加者 / 中学生]

Yuzuki Watanabe
_Chapter4 アートと他者を想像する力:学展審査員の視点

Judges' Perspective

_Chapter4 アートと他者を想像する力:学展審査員の視点

Judges' Perspective

絵を描くという行為は、子どもの想像力を大きく広げるものだと思います。頭の中に浮かんだイメージを、現実の世界に描き出す。その前段階で、どれだけ自分の中に「描きたい世界」を思い描けるかが大切です。想像する力は、他者の気持ちを考える力にもつながります。だからこそ、子どものうちから絵を描き、想像力を育てることは、人を思いやる感性を育むことでもある。芸術とは、そうした想像の連鎖を生み出す営みだと思います。

ヒロ杉山

(Enlightenment代表 / アーティスト)

他者を想像するためには、感性だけでなく知識も欠かせません。その人がどんな立場にいて、どんな状況の中にいるのか――背景を知らないまま想像すると、思い込みや誤解に基づいた「独りよがりな想像」になってしまうことがあります。そうした想像は、時に相手を傷つけることにもつながります。人を完全に理解することはできないけれど、「理解しきれない」という前提を持ちながら、それでも想像し続ける。その姿勢こそが、他者と共に生きるための第一歩なのだと思います。

福島夏子

(Tokyo Art Beat編集長)

他者を想像するということは、自分の知らない世界を思い描くことだと思います。国や文化、宗教、肌の色――人々の背景はさまざまで、時にそれが対立や争いを生むこともあります。けれども、アートはそれらの違いを越えて人の心を動かす力を持っています。音楽や絵画のように、言葉や国境を越えて感動を共有できるものは、世界を少しずつ変えていく可能性がある。アートには、他者を想像し、理解し、そして分断を超えていく力があると信じています。

牧正大

(MAKI Gallery代表)

今の時代は、調べればすぐに答えが見つかり、人と関わらずに完結してしまうことが多いと感じます。でも本当に大切なのは、自分の外にある世界に目を向けること。親や友人、先生だけでなく、植物や動物、虫といった命あるものにも心を寄せてみることです。耳を傾け、触れ合うことで、自分の中の感情や想像力が豊かに育っていく。そうした関わりの積み重ねが、人を思いやる力や、創作の根っこになるのだと思います。

佐々木香菜子

(アーティスト)

人の絵を見るとき、「この作品はどんな気持ちで描かれたのだろう」「どんな素材や技法を使ったのだろう」と考えるのが、僕はとても好きなんです。作品を通じて作者の思考や感情をたどることは、自分の想像を広げる行為でもあります。若い学生の皆さんにも、誰かの絵を見て、その人の気持ちになって考えてみる経験を大切にしてほしい。そうした想像の積み重ねが、新しい発見や、自分自身の表現への気づきにつながっていくのだと思います。

皆川伸一郎

(ビーズインターナショナル会長)

大切なのは、まずコミュニケーションを取ることだと思います。自分とはまったく違う環境で生きている人、異なる文化や価値観を持つ人と関わることで、初めて自分の世界が広がります。いまはSNSなどを通して、国や言葉の壁を越えた対話も可能な時代です。そうした交流の中で他者を知り、理解しようとする姿勢が育まれていく。アートもまた、その対話を促すためのひとつの言語なのだと思います。

沓名美和

(現代美術史家)

学展は、「他者を想像する4日間」のような新たな表現実験や、GAKUTEN芸術大賞受賞作のフランス・パリへの出展など、国際的な交流と創造の場を広げています。創立以来受け継がれてきた「次世代の芸術の担い手を育む」という理念を軸に、若い世代が自らの感性を自由に表現できる環境を育て続けます。学展はこれからも、芸術を通じて世界とつながり、未来に向けて想像力の輪を広げていきます。

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