REPORT
GAKUTEN 2016
SPECIAL EXHIBITION IN PARIS第66回 学展大賞受賞記念
パリ展示レポート
GAKUTEN 2016
SPECIAL EXHIBITION IN PARIS第66回学展大賞受賞記念
パリ展示レポート
Vol.1 水野 幸司
2016年度より、国際文化交流と世界で活躍する若手アーティストの育成を目的とし、学展大賞受賞作品をフランス・パリで展示する試みをスタートしました。記念すべき第1回目の展示作品は、2016年度学展大賞受賞、水野幸司さんの『百鬼夜行2016』。2017年2月13日から27日までの2週間にわたり、クールジャパン機構(※)がサポートする日本文化展示施設『MaisonWA』で展示されました。水野氏が展示期間中にパリを訪れた際の様子と、16歳の彼が心に抱く絵に対する想いをご紹介します。 ※2013年に官民ファンドとして設立された会社。日本の魅力(クールジャパン)を事業化し、様々な分野でリスクマネーの供給を行っている。
日常に芸術が在る街
- ─ はじめて訪れたパリの印象は?
- 計画された街づくりが第一印象です。東京は風景の移り変わりが激しく、混沌とした印象がありますが、パリの街は景観がしっかりと守られていて、夢の世界にきたような気分でした。生活の中に芸術が内包されているような印象もあり、想像以上に良い場所で、とても過ごしやすかったです。
憧れのアーティスト
- ─ パリを訪れた際、大友昇平さんの個展を観に、ギャラリー『Archive18-20』を訪れたそうですね。大友さんは影響を受けたアーティストの一人だと伺いましたが、展示はいかがでしたか?
-
大友さんを知ったきっかけは、ボールペン画を学んだことです。中学生の頃、『杉山アートルーム』というギャラリーで、杉山浩一先生に教えていただきました。その後、youtubeで大友さんのドローイング動画を見て、興味を持つようになりました。大友さんの作品の魅力は、”日本の自画像”的な部分が強く表現されていることだと思います。よくある「日本かっこいい!日本人は礼儀正しい!やさしい!」といったことではなく、日本の混沌とした部分や、より日本文化の本質的な部分も痛快に描き出しているように感じます。
大友さんのパリでの展示を観て、「作品の流れがまた変わった」と思いました。これまでの作品にあった、表面上のローカルチャー、サブカルチャー的な要素は薄れているはずなのに、もしくはそれだからこそか、さらに克明に、鋭く、日本人の持つ本質的な部分が出ているなと思いました。
心の根元から沸々と
- ─ ご自身にとって、『絵を描く』ことはどのような行為ですか?
-
まだそんなに長く生きていないので、偉そうなことは言えないのですが、絵に限らず芸術は「心の根元から沸々と沸き上がってくる欲求を行動にしたもの」だと思っています。
ラスコーやアルタミラの洞窟壁画が有名ですが、僕たちの先祖はなにがあるかわからない真っ暗な洞窟のなかで、命の危険を冒しながらも壁一面に絵を描きましたし、やはり「芸術」は極めて生物的な行為で、絵を描くこともそういった欲求の解消法のひとつなのだろうと感じています。
僕自身も、物心ついた頃から絵を描いていました。やりたいことをしているだけなのだと思います。楽しいからとか気持ちがいいからなんて言えたら格好良いのですが、よくよく考えると、描きながらイライラしたり、頭を抱えているときのほうが多い気がします。
パリデビューを終えて
- ─ パリの日本文化展示施設『MaisonWA』でご自身の作品が展示されて、どのような心境でしたか?
- たくさんの方々に支えられて、無事にパリで自分の絵を飾らせていただくことができました。本当に今でも実感が湧きません。ただパリということだけあり、「パリデビューだ!」と誇りに思う気持ちと、「こんな作品ですみません……」と思う両方の気持ちがありました。
- ─ 日本での展示との違いはありましたか?
- パリの方々は、”気楽に観る“、”純粋に楽しむ”といったスタイルで、芸術に対する距離感がとてもいいなと思いました。日本人の漫画やアニメを観るときの距離感はとてもいいと思うのですが、絵画や彫刻になると、どうしても距離をおいてしまっているように感じています。
芸術の再定義
- ─ 今後、どのようなアーティスト活動をしていきたいですか?
- 流行している現代アートは、元々ある西洋美術のルール、これまでの”芸術のリング”のようなものから外へ出るため、「どこからが芸術か?」と思うような作品が多く生み出されています。その結果、これまでの枠からはみ出し過ぎてしまって、どこにも辿りつけないような行き詰まりを起こしている気がします。僕はそれをもう一度元のリングヘ戻すような、芸術の本質というか、面白さを再発見できるような作品を作れたらいいなと思っています。
PROFILE
水野幸司
KOJI MIZUNO
2000年生まれ。駒込中学校高等学校在学中。
2016年 「百鬼夜行」が第66回学展大賞を受賞。
2017年 文化、スポーツ等の全国大会、コンクール等において最優秀の成績を収め理事長の推薦があった生徒に贈られる、
一般財団法人 東京私立中学高等学校協会主催 協会表彰を受賞。
2017年 2月、フランス・パリにある日本文化展示施設MaisonWaにて作品を展示しパリデビュー。
MAGAZINE
『WAttention』誌のフランス版(2017 年 3 月号 vol.06)で、水野幸司氏の
MaisonWa での展示の様子が紹介されました。
『WAttention』誌のフランス版(2017 年 3 月号 vol.06)で、水野幸司氏のMaisonWa での展示の様子が紹介されました。
MORE TO READ