73th GAKUTEN WINNER INTERVIEW
第73回 学展 受賞者インタビュー
『国立新美術館』(東京・六本木)で開催された、第73回 学展作品展。今年は3年ぶりに表彰式も開催され、審査員による審査報告や賞状授与、作品展のコンセプト『新しい時代を創るとき』にちなんだインタビュー動画の上映が実施されるなど、昨年以上に活気溢れる作品展となった。表彰式にも参加した各部門の上位受賞者4名に、出展作品やアート制作に向ける思いをうかがった。
大学・専門部
優秀賞
東京藝術大学 大学院
野田紘
WORK TITLE
Shape of beginning
『生命力』をテーマにしたガラス作品。野田さんの生まれ故郷である新島の海で見た蛸をモチーフとしている。「私は生物や現象には、始まりの形があるのではないかと考えています。生物学上の幼体の様なものではなく、内面に存在する生命力の根源を表現しようと試みました。本作は、この形から、蛸の原始がだんだん大きく成長し、内包された力が中で蠢いている様を表現しました」。
制作手法は、吹き竿の先に高温で液状化したガラスをつけ、息を吹き込み膨らませながら成形を行う『宙吹き(ちゅうぶき)』技法を採用。ガラスが冷めるととても割れやすくなってしまうため、作業時間もかなり限られてしまう。「1,2時間の間にすべての形を決めて、自分の持つイメージとあわせていく必要があるので、その点はとても苦労しました」。
ガラス作家のご両親のもとに生まれた野田さんは、幼い頃からアート作品やアーティストの方と触れ合うなかで、多くのインスピレーションを受けてきたそう。「両親の工房では、ガラスアートフェスティバルと呼ばれる、海外のガラス作家を招聘し、その作家から学ぶことができるワークショップを毎年開催しています。その中で、幼い頃より多くの作家の方々の作品を拝見し、交流を深めて行きました。特定の決まった方ではなく、両親をはじめ、様々なガラス作家の方々から少しずつ影響を受けているのだと思います」。
今後の制作活動については、「本作のような独特なテクスチャーを持つ作品の制作を続けつつ、検証を繰り返しながら、自身の作風を模索していきたい」と力強く語ってくれた。