73th GAKUTEN WINNER INTERVIEW
第73回 学展 受賞者インタビュー
『国立新美術館』(東京・六本木)で開催された、第73回 学展作品展。今年は3年ぶりに表彰式も開催され、審査員による審査報告や賞状授与、作品展のコンセプト『新しい時代を創るとき』にちなんだインタビュー動画の上映が実施されるなど、昨年以上に活気溢れる作品展となった。表彰式にも参加した各部門の上位受賞者4名に、出展作品やアート制作に向ける思いをうかがった。
高校部
青木昭夫 審査員賞
杉野碧澄
WORK TITLE
犬
幼少の頃から動物が好きで、当時からインターネット上の写真を参考に、動物の絵を描いていたという杉野さん。その神秘的な存在に惹かれ、描いた絵の多くは、彼女の動物への理想が詰まったものだったそう。ところが、約2年前に念願の柴犬を家族に迎え、実際に動物と触れ合うようになったことで、その価値観に変化があった。「天気による毛の感触の変化や、喜怒哀楽の豊かな表情もあって。人間と同じ『生きている』ということを実感したんです」。その経験をもとに、かわいい愛犬が暮らしのなかでふと見せた、本来の野生の姿を絵で表現した。
作品のサイズはF100号。大きい作品の制作は初めての挑戦で、手探り状態で取り組んでいたと振り返る。「作品が大きい分、制作に多くの時間を費やしました。その中で調子が悪い日や、飽きてしまう日もありました。でも『楽しむ』ことを意識し、行動に移すハードルを下げたことで、最後まで自分の思いを作品に込められたと思っています」。
また、学校の美術部で活動している杉野さんにとって、ともにアートを学ぶ友人たちの存在も大きな支えになっているそう。「高校部 最優秀部門賞を受賞した山下乃野葉さんは、友人であり、美術や制作中の作品についてよく話す、私の良き理解者でもあります。彼女の美術に対する姿勢や態度に日々感銘を受けています。制作中、理想を追及しすぎるがゆえに、絵の目の前に座ることさえ億劫に感じてしまうときがあります。そんな時に見た、大胆な筆使いや鮮やかな色使いで描かれた彼女の作品は、とても感動しました。我が道を行く彼女の姿は今でも私の憧れです」。
今後については、「表現者として世界的に作品を発表し続けるだけでなく、教養を身につけた国際人でありたい」と、留学を予定。様々な人と関わりながら、新しい発見や学びを得て、これからの作品に活かしたいと語ってくれた。